リュネビル刺繍

リュネビル刺繍とは、1810年にフランスのリュネビルという場所で生まれた刺繍の技法のことです。当初はチュールの上に刺繍を施し、レースのように見せるための技法として用いられていました。聖職者の法衣や祭壇用の布から、ドレス・帽子・ショールなど、幅広い製品に使用されています。

リュネビル刺繡の特徴は、「クロシェ」という先端が鋭いかぎ針を使用することです。針の先端のフック状になっている部分に細い糸を引っ掛け、布に針を押し付けながら刺繍を施していきます。クロシェは通常の刺繍用の針よりも使いやすいと、リュネビルとその周辺地域の刺繍職人の間で評判になりました。

また刺繍を施す際は生地の裏面から糸を縫い付けていくのも、リュネビル刺繍の特徴のひとつです。次第にビーズやスパンコールを刺繍するときにも用いられるようになり、リュネビル刺繡はさまざまな場面で活躍するようになりました。当時は家内制手工業に携わっていた女性が多く、ほとんどの家庭で刺繍を行っていたのも、リュネビル刺繍が広まった理由と考えられます。

20世紀になると世界恐慌や2回の世界大戦の影響でリュネビル刺繡を手掛ける会社は4~5社にまで減少しましたが、現在までリュネビル刺繡の技術は受け継がれています。近年は道具や材料を気軽に購入できるようになったこともあり、日本国内でもリュネビル刺繡を趣味として楽しんだり、ハンドメイド作家として活動したりしている人もいます。