絵画・美術品を売却したときにかかる税金とは?
絵画や美術品を売却したからといって、売却代金の全額に税金がかかるわけではありません。
個人が所有する絵画・美術品などを売却した場合の税金は、「いくらで売れたか」だけでなく、「いくらで取得したか」「売却のためにどのくらい費用がかかったか」「どのくらいの期間所有していたか」などによって変わります。取得費や売却のために直接かかった費用を差し引いた後に利益が生じた場合は、譲渡所得として課税対象になる可能性があります。
また、「30万円を超える絵画や美術品を売却すると税金がかかる」と思われることがありますが、30万円は税額そのものを決める基準ではありません。実際の税額は、売却によって生じた利益や取得費、所有期間などによって異なります。
このページでは、個人が絵画・美術品を売却したときの基本的な税金の考え方と計算方法を分かりやすく解説するとともに、売却価格や取得価格などを入力して、概算税額を確認できるシミュレーターをご用意しています。
まず確認しておきたい3つのポイント
POINT 01
売却代金の全額に税金がかかるわけではありません
原則として、売却価格から取得費や売却のために直接かかった費用などを差し引いた利益を基に計算します。
POINT 02
「30万円を超えたら税金がかかる」とは限りません
1個または1組の価額が30万円を超える書画・骨董などは、生活用動産の非課税制度の対象外となる可能性があります。ただし、30万円を超えた金額そのものに税金がかかるわけではなく、実際の譲渡益などを基に税額を判断します。
POINT 03
所有期間が5年を超えるかどうかで計算が変わります
所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得として扱われ、課税所得に算入される金額の計算方法が異なります。
「30万円を超えたら税金がかかる」とは限りません
家具や衣服など、生活に通常必要な動産を売却したことによる所得は、原則として非課税です。
一方、貴金属、宝石、書画、骨董などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの売却による所得は、この非課税制度の対象から除かれます。
ただし、「30万円を超えた部分に税金がかかる」「30万円を超えたら売却代金全額が課税される」という意味ではありません。実際には、売却価格から取得費や譲渡費用などを差し引いた譲渡益を基に計算します。
譲渡所得の基本的な計算方法
土地・建物・株式など以外の資産にかかる総合課税の譲渡所得には、その年の短期譲渡益と長期譲渡益を合わせて、最高50万円の特別控除があります。
この50万円は作品1点ごとの控除ではありません。短期譲渡益と長期譲渡益の両方がある場合は、まず短期譲渡益から控除し、残額があれば長期譲渡益から控除します。
例:美術品を120万円で売却した場合
譲渡費用5万円・所有期間5年超・その年の特別控除50万円を
全額使用できるものとして比較します。
CASE 01
取得費が分かる場合
売却価格:1,200,000円
取得費:600,000円
譲渡費用:50,000円
特別控除:500,000円
1,200,000円 − 600,000円
− 50,000円 − 500,000円
譲渡所得:50,000円
所有期間が5年を超える長期譲渡所得では、特別控除後の譲渡所得の2分の1が総所得金額に算入されます。
総所得金額に算入される金額
50,000円 × 1/2 = 25,000円
CASE 02
取得費が分からない場合
売却価格:1,200,000円
概算取得費5%:60,000円
譲渡費用:50,000円
特別控除:500,000円
1,200,000円 − 60,000円
− 50,000円 − 500,000円
譲渡所得:590,000円
取得費を確認できない場合、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できる場合があります。
所有期間が5年を超える長期譲渡所得では、特別控除後の譲渡所得の2分の1が総所得金額に算入されます。
総所得金額に算入される金額
590,000円 × 1/2 = 295,000円
総所得金額に算入される金額の差は270,000円です
この例では、取得費が分かる場合は25,000円、取得費を5%として計算した場合は295,000円となります。購入時の領収書や契約書、画廊・百貨店の販売証明書などは、できるだけ保管しておくことが大切です。
※上記の25,000円と295,000円は税額そのものではなく、総所得金額に算入される金額の例です。実際の所得税・住民税額は、給与所得や年金所得などのほかの所得、各種所得控除などによって異なります。
※取得費を譲渡価額の5%として計算できるかどうかを含め、個別の税務判断については税理士または税務署へご確認ください。
絵画・美術品の売却でよくある6つのケース
実際のご相談で多いケースを例に、税金の考え方を簡単に整理します。
CASE 01
50万円で買った絵画を100万円で売却した
100万円全額に税金がかかるわけではありません。取得費や譲渡費用を差し引き、さらに適用できる特別控除などを考慮して譲渡所得を計算します。
CASE 02
20年前に買った絵画を300万円で売却した
所有期間が5年を超えている場合は、原則として長期譲渡所得になります。特別控除後の譲渡所得の2分の1が総所得金額に算入されます。
CASE 03
相続した絵画・美術品を売却した
相続したからといって取得費がゼロになるわけではありません。原則として被相続人の取得費や所有期間を引き継いで考えるため、購入時の資料が残っていないか確認することが大切です。
CASE 04
昔買った絵画で購入価格が分からない
取得費を確認できない場合、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できる場合があります。領収書だけでなく、契約書や画廊・百貨店の販売証明書なども確認してみましょう。
CASE 05
30万円を超える絵画を売却した
「30万円を超えた=その金額に税金がかかる」という意味ではありません。書画・骨董などの30万円基準と、実際の譲渡所得の計算は分けて考える必要があります。
CASE 06
同じ年に複数の美術品を売却した
50万円の特別控除は作品1点ごとに使えるものではありません。その年の総合課税の譲渡益全体について適用される年間の上限額として考えます。
ご自身のケースではどのくらいになるのか、下の税金シミュレーターで概算を確認してみてください。
実際に計算してみましょう
下記のシミュレーターでは、絵画・美術品を売却した場合に増加する税額の目安を簡易的に試算できます。
入力した美術品以外に同じ年の譲渡所得がないものとして計算します。各種所得控除、ほかの所得、譲渡費用、住民税の申告条件などを完全には反映できないため、表示結果は確定税額ではありません。
絵画・美術品 売却税額シミュレーター
※本シミュレーターは個人が所有する美術品を売却した場合の概算です。
※表示結果は確定税額ではありません。正確な税額は税務署または税理士等へご確認ください。
※税額は1円未満を切り捨てて表示しています。
所有期間5年超・5年以下で税金の計算が変わります
絵画・美術品の譲渡所得は、所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分けられます。
所有期間5年以下
短期譲渡所得
特別控除後の短期譲渡所得の金額が、原則として全額、総所得金額に算入されます。
所有期間5年超
長期譲渡所得
特別控除後の長期譲渡所得の2分の1が、総所得金額に算入されます。
所有期間の判定に注意
総合課税の譲渡所得では、取得した日から売却した日までの所有期間が5年を超えるかどうかで判定します。購入時期が分かる領収書、契約書、販売証明書などが残っている場合は、取得費だけでなく所有期間を確認する資料としても大切に保管しておきましょう。
昔購入した絵画で、取得費が分からない場合
長年所有している絵画や美術品では、「いつ、いくらで購入したのか分からない」「購入時の領収書が残っていない」ということも珍しくありません。
取得費を確認できない場合には、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算できる場合があります。ただし、実際の購入価格よりも取得費が低く計算されると、その分だけ譲渡所得が大きくなる可能性があります。
購入時の資料が残っていないか確認してみましょう
領収書だけでなく、売買契約書、画廊や百貨店の販売証明書、保証書、購入時の作品台帳などが手掛かりになることがあります。作品と一緒に保管されている書類や箱なども、処分せず確認しておくことをおすすめします。
※取得費の計算方法や、どの資料を取得費の根拠として使用できるかなど、個別の税務判断については税理士または税務署へご確認ください。
相続した絵画・美術品を売却する場合
相続によって取得した絵画や美術品を売却する場合、相続時の評価額や現在の査定額が、そのまま取得費になるとは限りません。
原則として、被相続人がその美術品を取得したときの取得費や取得時期を引き継いで考えます。そのため、故人が購入した当時の領収書、契約書、販売証明書などが残っていれば、売却前に確認しておくことが重要です。
相続した美術品は「購入価格が分からない」ケースも多くあります
遺品から見つかった作品では、作者や購入先、購入価格が分からないことも珍しくありません。税金を考える前に、まず作品の現在の価値を確認しておくと、売却するかどうかを判断しやすくなります。
相続や遺品整理で見つかった絵画・美術品について、作者や価値が分からない場合は、 遺品整理で絵画・美術品が見つかったときの確認ポイント もあわせてご覧ください。
※贈与によって取得した美術品についても、原則として贈与者の取得費や取得時期を引き継ぎます。相続税の取得費加算の特例などが関係する場合もあるため、個別の税務判断は税理士または税務署へご確認ください。
絵画・美術品の売却前に確認・保管しておきたい資料
美術品を売却する際は、作品そのものだけでなく、購入時や売却時の資料もできるだけ残しておきましょう。取得費や所有期間を確認する手掛かりになるほか、作品の査定でも重要な情報になる場合があります。
購入・取得に関する資料
・購入時の領収書、請求書、契約書
・画廊、百貨店、販売会社の販売証明書や保証書
・鑑定書、作品証明書、購入時の作品資料
・相続や贈与の経緯が分かる資料
売却に関する資料
・買取明細書、売買契約書
・売却価格が確認できる書類
・売却のために直接支払った費用の領収書
・査定書など売却時に受け取った資料
資料がすべて揃っていなくても美術品の査定は可能です。古い領収書や保証書などが見つかった場合は、作品と一緒に査定時に確認してもらうとよいでしょう。
絵画・美術品を売却したら確定申告は必要?
絵画や美術品を売却して利益が出た場合でも、すべての方が必ず所得税の確定申告をしなければならないとは限りません。確定申告が必要かどうかは、譲渡所得の金額だけでなく、給与所得者、年金受給者、個人事業主などの状況や、ほかの所得の有無などによって異なります。
「20万円以下なら申告不要」とは限りません
給与所得者には、給与所得・退職所得以外の所得金額が20万円以下である場合に、一定の条件のもと所得税の確定申告が不要となる取扱いがあります。ただし、これはすべての方に共通する「20万円まで非課税」という制度ではありません。
また、所得税の確定申告が不要となる場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
美術品の売却以外の所得や医療費控除なども含め、申告の要否は個人の状況によって変わります。判断に迷う場合は、税務署、税理士またはお住まいの自治体へご確認ください。
税金シミュレーターのご利用にあたって
本ページおよび税金シミュレーターは、個人が所有する絵画・美術品を売却した場合の一般的な税制度を基に、概算を確認するための参考情報として作成しています。
実際の税務上の取扱いは、取得方法、所有期間、ほかの所得、同一年中のほかの譲渡、相続・贈与の状況などによって異なります。また、事業として継続的に美術品を売買している場合、法人が売却する場合、海外取引がある場合などは異なる取扱いになることがあります。税制改正の可能性もあるため、確定申告や個別の税務判断については、税理士または税務署へご確認ください。
売却するか迷っている美術品がある方へ
税金を確認するうえでも、まずはお持ちの絵画・美術品が現在どのくらいの価値なのかを知っておくことが大切です。
美術品・絵画買取センター(BKKC)では、絵画・美術品の査定を無料で承っています。作者や購入価格が分からない作品、相続した作品、古い作品、鑑定書や保証書が残っていない作品についても、まずはご相談ください。
査定をしたからといって、必ず売却する必要はありません。現在の査定額を確認したうえで、売却するか、そのまま所有するかをご検討いただけます。
個別の税務判断・確定申告について
BKKCでは美術品の査定・買取についてご相談いただけますが、個別の税額計算や確定申告などの税務判断は行っておりません。税金の取扱いは、作品の取得時期、購入金額、所有期間、ほかの所得などによって異なります。
個別の税務判断や確定申告について専門家への相談を希望される方は、当社顧問の矢口貴久税理士事務所へご相談いただけます。
