アウトサイダー・アート

アウトサイダー・アートとは、正規の美術・芸術教育を受けていない人物が制作した作品のことです。独学で学んでいるゆえに独創的で型にはまらず、ときには刺激的な作品が生まれます。あれこれ見ていると、自分好みの作品を制作する無名の作家を見つけられるのが、アウトサイダー・アートの面白いところです。現在は無名作家の作品にも芸術的価値が見いだされ、美術館に収蔵・展示されることもあります。

アウトサイダー・アートというジャンルができたのは、1945年。フランスの画家であるジャン・デュビュッフェが、強迫的幻視者や精神障害を患っている人の作品を評価したのが始まりです。当時は、フランス語で「直接的・無垢・生の芸術」を意味する「アール・ブリュット」と呼ばれていました。アウトサイダー・アートという言葉が登場したのは、1972年。イギリスの美術評論家ロジャー・カーディナルが自身の著書で使い、英語圏のアート市場の拡大に伴ってアウトサイダー・アートという呼び方が主流になりました。

アウトサイダー・アートの作家として知られているのは、スイスのアドルフ・ヴェルフリや、スコットランドで生まれたジョン・ケインなど。アドルフ・ヴェルフリは過酷な生い立ちから31歳で統合失調症の診断を受け、精神病棟で絵画の制作を始めました。ジョン・ケインは31歳の時に不慮の事故で両足を失い、絵を描き始めます。美術学校の支払うお金がなかったため、独学で絵を学びました。1972年に彼が描いた『スコットランド・ハイランドの風景』が入選したことで、多くの人に知られるようになりました。