「同じような絵に見えるのに、なぜ査定額が違うのだろう」
絵画の売却を検討している方にとって、査定額がどのように決まるのかは気になるところではないでしょうか。
絵画の査定では、作品の見た目や作家名だけで価格を決めるわけではありません。
作家、作品の来歴、保存状態、現在の美術市場での取引状況などを確認し、さらに技法、サイズ、制作年代、作品の特徴、類似作品の取引事例なども考慮しながら総合的に判断します。
ここでは、査定を理解するうえで特に重要なポイントを、「作家」「来歴」「状態」「市場」の4つに分けて解説します。
絵画の査定額は一つの条件だけでは決まらない
絵画の査定で確認される主なポイントは、次の4つです。
1.作家
誰が制作した作品なのか
2.来歴(プロヴナンス)
いつ、どこで購入され、どのように所有されてきたのか
3.状態(コンディション)
作品に傷みや修復などがないか
4.市場
現在、その作家や作品にどの程度の需要があるのか
実際には、これらに加えて作品の技法、サイズ、制作年代、主題、希少性なども確認します。
そのため、「有名な作家だから必ず高額になる」「古い作品だから価値が高い」と単純に判断できるものではありません。
1.作家|まず確認される基本的な情報
絵画を査定する際、最初の重要な手掛かりとなるのが作家に関する情報です。
作家名が分かっている場合には、その作家の作品が美術市場でどのように取引されているかを調べます。
たとえば、
■過去のオークションでの取引状況
■画廊や美術市場での評価
■どの時代の作品が評価されているか
■油彩、日本画、版画など、どの技法の作品か
■同じ作家の類似作品がどの程度で取引されているか
といった点です。
単に「有名な作家かどうか」だけを見るわけではありません。
同じ作家でも査定額が大きく違うことがある
同じ作家の作品であっても、すべて同じ価格になるわけではありません。
たとえば、その作家を代表する時代の作品なのか、評価の高い主題や作風なのか、作品のサイズや技法はどうか、といった違いによって評価が変わります。
作家によっては、油彩と版画で市場価格が大きく異なることもあります。
また、同じ技法でも、代表的な作風の作品と比較的流通量の多い作品では取引価格に差が生じる場合があります。
つまり、「誰が描いたか」と同時に「その作家のどのような作品なのか」を見ることが重要です。
2.来歴(プロヴナンス)|作品がたどってきた履歴
「来歴(プロヴナンス)」とは、簡単にいえば作品がこれまでどのように所有され、移動してきたのかという履歴です。
美術館などの来歴調査では、過去の所有者、売買、所在などを調べるために、売買記録、展覧会資料、作品の裏面に残されたラベルや印、書き込みなど、さまざまな資料が確認されます。
個人が所有している絵画の場合でも、次のようなものが作品を調べる手掛かりになることがあります。
■購入時の領収書や請求書
■画廊・百貨店などの購入記録
■作品証明書や鑑定に関する資料
■展覧会図録や出品記録
■作品や額の裏側に貼られた画廊・展覧会などのラベル
■共箱や箱書き
■以前の所有者や入手経緯が分かる資料
こうした資料は、作品の履歴を確認するうえで重要な情報になる場合があります。
来歴が分からなくても査定はできる?
「昔から家にあったので、どこで購入したのか分からない」
「親から相続したため、領収書も証明書も残っていない」
このような作品は珍しくありません。
来歴が分からないからといって、それだけで「価値がない」と判断されるわけではありません。実際、美術館が所蔵する作品であっても、過去の所有履歴に空白が残っているケースがあります。
そのため、資料が見つからなくても、まずは作品そのものを確認することが大切です。
一方で、信頼できる資料によって来歴が確認できれば、作品の出所や所有履歴を検討するうえで有力な情報になります。
3.状態(コンディション)|作品本体の傷みを確認する
絵画の査定では、作品の保存状態も重要です。
確認されるのは、たとえば次のような点です。
■シミや変色
■カビや汚れ
■絵具の剥落
■ひび割れ
■キャンバスの破れや変形
■紙作品の折れや破れ
■水濡れなどによる損傷
■過去の修復や補彩の有無
ここで注意したいのは、額縁の傷みと作品そのものの傷みは、分けて考える必要があるということです。
額に傷や汚れがあっても、作品本体の状態が良好なケースはあります。
「額が古いから作品も価値がない」と自己判断して処分しないようにしましょう。
売却前に自分で修復・清掃しない
古い絵画を見つけたとき、
「少し汚れているから拭いておこう」
「剥がれている部分を接着しておこう」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、自己流の清掃や修復はおすすめできません。
使用する薬剤や水分によって絵具や紙を傷めたり、表面の状態を変えてしまったりする可能性があるためです。
専門的な修復が必要な作品については、作品の材質や状態を確認したうえで適切な処置を検討する必要があります。
売却を考えている場合は、手を加える前の状態で査定を依頼する方が安全です。
4.市場|「今、いくらで取引されているか」
絵画には、美術史上の評価とは別に美術市場での価格があります。
査定では、
■最近のオークションでの取引状況
■類似作品の成約事例
■その作家への現在の需要
■国内外での需要
■作品の流通量
なども参考にします。
そのため、著名な作家の作品だからといって、必ずしもすべての作品が同じように高額で取引されるわけではありません。
反対に、特定の作家やジャンルへの需要が高まることで、以前とは市場での評価が変化することもあります。
市場価格は固定されたものではない
美術品の市場価格は常に一定ではありません。
オークションでの取引状況、国内外のコレクター需要、市場に出てくる作品数など、さまざまな要因によって変化します。
展覧会や研究の進展などが作家への関心につながることもありますが、「展覧会が開かれたから価格が上がる」と単純に決まるものではありません。
査定を行う時点での市場動向と、できるだけ条件の近い作品の取引事例を確認することが重要です。
「査定」と「真贋の鑑定」は同じではない
ここは、絵画を売却する際に知っておきたいポイントです。
買取査定と、作品の真贋を正式に判定する鑑定は同じものではありません。
作家によっては、鑑定機関や専門家、鑑定委員会などが存在し、所定の手続きを経て鑑定を行う場合があります。また、作品証明書、鑑定書、カタログ・レゾネへの掲載などが市場で重要視されるケースもあります。
一方、すべての作家に同じ鑑定制度が存在するわけではありません。
査定時には、作品、署名、裏面、箱、ラベル、付属資料などを確認したうえで、必要に応じて追加調査や専門機関への確認が必要になる場合があります。
4つの要素を総合して査定する
絵画の査定では、
作家 × 来歴 × 状態 × 市場
という4つの視点を中心に、作品ごとの条件を確認していきます。
たとえば、同じ作家の作品でも、
「代表的な作風で、状態が良く、来歴を確認できる資料があり、現在の市場でも需要がある作品」
と、
「流通量の多い作品で、傷みがあり、現在の市場で取引が少ない作品」
とでは、査定結果が異なる可能性があります。
だからこそ、絵画は作家名だけで価値を判断することができません。
作品について分かるものは一緒に保管しておく
これから絵画の査定を依頼する場合は、作品だけでなく、関連する資料もできるだけ一緒に確認しておくことをおすすめします。
購入時の領収書、作品証明書、鑑定書、展覧会図録、箱、画廊のシール、古い写真など、一見すると価値がなさそうなものでも、作品について調べる手掛かりになることがあります。
「必要かどうか分からないから」と先に捨ててしまうのではなく、作品と一緒に査定時に見てもらうのがよいでしょう。
絵画の査定は「作品の情報を一つずつ確認する作業」
絵画の査定額には、単純な計算式があるわけではありません。
作家、来歴、状態、市場を中心に、技法、サイズ、制作年代、作品の特徴、過去の取引事例などを一つずつ確認しながら、その作品が現在の市場でどのように評価されるのかを検討します。
大切なのは、作家名やサインだけを見て自己判断しないことです。
購入先が分からない作品、証明書が見つからない作品、長年しまったままになっていた作品でも、調べてみなければ分からないことがあります。
「価値があるか分からない」という段階でも、作品や付属資料をできるだけそのままの状態で確認してもらうことが、適切な査定への第一歩です。
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