オフセットとは、凹凸のない版を用いる印刷・版画技法「平版技法」の一種です。凹凸を付けて色を写す部分を描くのではなく、親油性のインクを用いて描画し、紙に色を写し取ります。オフセットの特徴は、インクを盛った版板の色を写し取るときに「ブランケット」というローラーを使うところ。一般的な版画は版と紙を直接重ね合わせて転写するのに対し、オフセットでは版のインクをブランケットで写し取り、ブランケットに付着したインクを紙に乗せていきます。ブランケットはゴムや樹脂でできているものが多く、版と紙を直接こすり合わせない分、版を長持ちさせられるのがメリットです。
ブランケットはローラー型のため、機械化すれば高速で大量の印刷物を生産できるのも特色。色を鮮明に映し出すことも可能で、現在広く普及している印刷技術の1つです。印刷の効率のよさと品質の高さをもとに、絵画をはじめとした美術作品の複製に使用する場合もあります。有名で高額な絵画でも、オフセット印刷のものなら本物そっくりの状態で安く入手できます。
輪転機(ローラー)を使用してオフセット印刷を初めて試みたのは、1875年とされています。担当したのは、イギリスのロバート・バークレーです。20世紀初期にはアメリカの印刷業者によって商業用の輪転機が開発されました。アメリカの発明家であるアイラ・ルーベルは、その中心人物の1人です。大量印刷を実現したオフセット印刷は、あえて複製品を活用する現代のポップアートにも多く用いられています。