トーナリズム

トーナリズムとは、19世紀末~20世紀初頭にかけてアメリカで流行した風景画の様式です。日本では「色調主義」と訳されることがあります。灰色・茶色・青といった暗めの色を使用し、陰影や雰囲気を強調した作風が特徴です。1890年代のアメリカの美術評論家たちが、国内絵画の新しい動向を「トーナル(色調)」と表現したのが始まりとされています。

トーナリズムが誕生する以前のアメリカでは、見たものを本物そっくりに、時には作者自身の理想を織り交ぜながら描く風景画の芸術運動ハドソン・リバー派や、明るい色彩とぼやけたタッチが特色の印象主義が流行していました。光に照らされた柔らかい色調の作品に対し、暗黒色を積極的に使用したトーナリズムの作品は、当時の人の目には新しい作風であるように映ったでしょう。

代表的な芸術家としては、ジョージ・イネスやトマス・デューイング、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーなどが挙げられます。ジョージ・イネスは「アメリカの風景画の父」とも呼ばれており、『夏の風景』では夏の強い日差しを茶色がかった色調で表現しました。トマス・デューイングは青緑や茶色など暗めの色彩を使用し、女性を描き込んだ作品を多く残しています。

ジェームズ・マクニール・ホイッスラーは主にロンドンで活動し、日本の浮世絵や水墨画の描法・構図の影響を受けながら『青と金のノクターン-オールド・バターシー・ブリッジ』のような作品を作成しました。