唐津焼とは、長崎県・佐賀県を中心に生産されている陶磁器のことです。古くから茶人に好まれており、一楽二萩三唐津(いちらくにはぎさんからつ)と言われるほど高い評価を受けていました。唐津焼の始まりは諸説あり、豊臣秀吉が朝鮮出兵の折に朝鮮の職人に焼き物を作らせた1592年頃とも、朝鮮出兵前の1580年以前とも言われています。
当初は茶碗や湯飲みといった日用品を生産していましたが、素朴な風貌が注目を集め、次第に茶器としての人気も集めるようになりました。しかしながら江戸時代以降は窯元が乱立して焼き物づくりに使う土が枯渇し始め、当時の佐賀藩は取り締まりを強化。窯元を有田に集約させたことも相まって、唐津焼の窯元はかなり減少しました。
唐津焼が復活したのは、大正から昭和にかけてのこと。人間国宝にもなった中里無庵が中心となって調査・研究を進め、唐津焼の技術がよみがえりました。
唐津焼の特徴は、土の質感を残しているところです。素朴な印象はありつつも粗さは見せず、上品にまとまっているのが魅力です。わび・さびを大切にする茶道では唐津焼のシンプルさが好まれ、茶席でも盛んに用いられるようになりました。
ほかの産地と比べると種類が豊富なのも、唐津焼の特色です。主なものとしては、鉄分を多く含んだ釉薬で黒く焼き上げる「黒唐津」、絵付けを施した「絵唐津」、李氏朝鮮から伝来したとされる「朝鮮唐津」などが挙げられます。落ち着いた雰囲気を保ちつつ豊かな表現力も兼ね備えており、今もなお多くの人々を魅了し続けている陶磁器です。