本場黄八丈(ほんばきはちじょう)とは、東京都八丈島で生産されている絹織物のことです。特徴は、黄・黒・樺(かば)の3色を使うところ。自然環境が厳しい八丈島では、かつてはこの3色しか得ることができませんでした。よく見られる柄は、縞模様や格子柄です。
本場黄八丈の原型となる織物の生産は、平安時代末期には始まっていたと考えられています。八丈島から内地へ本場黄八丈が渡ったのは室町時代のことで、当時は年貢として納められていました。当初は大名や大奥といったごく一部の人のみが使用していましたが、黄色には不浄除け・魔除けの意味があることから、民間人(特に医者)の間でも着られるようになりました。八丈島で作られる織物は入手するのが難しく、高級品として扱われていたようです。1977年(昭和52)には、経済産業大臣指定の伝統的工芸品に登録されました。
本場黄八丈を作る際は、八丈島で採れる植物を使用します。黄染に使うのはコブナグサ、黒染めは枯らしたシイの樹皮、樺染はイヌグスの樹皮です。糸に色を染色する際は、「ふしづけ」と「あくつけ」の工程を何度も繰り返し行います。「ふしづけ」は「ふし」という植物の煮出し汁に糸を漬け込んで染色する工程、「あくつけ」は灰を使って発色を良くするための工程です。黒染の場合は、「あくつけ」に加えて「泥つけ」も行うこともあります。糸が出来上がったら、江戸時代から続くとされている平織と綾織で織り進めて完成です。