象徴主義

象徴主義とは、19世紀後半のフランスで興った芸術運動の1つです。神秘的なものや超自然的なものを、絵画・文学・音楽など幅広い芸術分野で表現しようとしたのが特徴。現実に見えている人物や風景からは目を背け、人々の心に潜む苦難・恐れ・苦悩や、逃れられない運命をテーマに作品を制作しました。象徴主義の先駆者と考えられているモローは、「目に見えないもの、ただ感じるものだけを信じる」といった旨の言葉を残しています。

象徴主義が目に見えるものではなく、心のうちに秘めたものを主題にした背景には、当時のヨーロッパの物質文明があります。この頃のヨーロッパは産業革命とインフラの整備によって物質的に豊かになり、物を消費することが豊かさの象徴だと考えるようになっていました。そんな物質主義的な流れに反発して登場したのが、象徴主義。象徴主義の芸術家たちは、目に見えない精神的なものを追い求めていきました。象徴主義の絵画を鑑賞するときは、作者の意思や考えを想像することが大切です。

フランスから始まった象徴主義は次第に他国へと広がり、ヨーロッパ全土やロシアでも作品が作られるようになりました。象徴主義の代表的な芸術家は、ギュスターヴ・モローやオディロン・ルドン、エドワルド・ムンクなどが挙げられます。パリ出身のモローは『オイディプスとスフィンクス』、フランスのボルドー出身のルドンは『キュクロプス』、ノルウェー出身のムンクは『生のダンス』などを残しています。