アノニマス・デザイン

アノニマス・デザインとは、作者不明や匿名で、作者を特定できないデザインのことです。また、デザイナー個人の名前を伏せた状態で、世に送り出したデザインを指す場合もあります。家具や文房具をはじめとした世の中にある様々な製品は、改良を何度も行ったため、誰が初めにデザインしたのか遡るのが難しい状況にあるケースがよく見られます。しかし使いやすさを追求したデザインは美しさにも優れており、それを評価するためにアノニマス・デザインという言葉が使われるようになりました。

アノニマス・デザインという言葉が生まれたきっかけは明らかになっていませんが、1960年に日本人インダストリアルデザイナーの柳宗理(やなぎそうり)が、日本で開催された世界デザイン会議で発言したことで知られるようになりました。当時は科学実験に使う器具やスポーツ用品を例に挙げたうえで、「純粋に用途のみを考慮した製品、即ち無名のデザインは非常に健康的」であると述べたようです。自身の父親で民芸運動の先駆者であった柳宗悦(やなぎむねよし/そうり)の、無名の物に美を見出す精神を受け継いだモダンデザインも提唱しました。

1965年には、柳宗理監修で野球ボールなどを陳列した「デザイナーのタッチしないデザイン」展を開催。のちにデザイナーの名前をあえて表に出さずに商品を並べる、無印良品の設立のきっかけにもなりました。アノニマス・デザインは、機能美を追求したデザインや、そのデザインをもとに作られた製品を指すこともできます。