アヴァンギャルド

アヴァンギャルドとは、主に芸術・政治・文化の分野において、実験的もしくは革新的な人々や作品を指す言葉です。フランス語で「前衛」「前衛部隊」を意味する【Avant-garde】が語源になっており、もともとは軍隊用語でした。本隊の先駆けとしていの一番に敵部隊と対峙する前衛部隊から意味が転じて、芸術分野ではその時代の常識から逸脱し、先端的な表現であることを指します。

アヴァンギャルドの始まりは1870年代。起源となった芸術家は、フランスの画家のギュスターヴ・クールベとされています。クールベは今まで描かれてこなかった労働者や貧民を題材にしたり、理想化されていない現実的なヌード画を作成したりしました。国家権力や貴族といった強大な存在からの注文を受けず、芸術家個人の世界観や思考を投影する自由な創作活動は、新たな絵画様式の誕生にも影響を与えます。

まず誕生したのが印象派です。これまで主流であった写実主義から逸脱し、画家本人が抱いた印象を反映させた作品がフランスを中心に制作されました。印象派に続いてフォービズムやキュビズムといった芸術運動が起こるほか、「ロシア・アヴァンギャルド」という地域独自のアヴァンギャルドも生まれ、ヨーロッパ各地の芸術活動はより盛んになります。

戦後になると、アヴァンギャルドは王侯貴族への反発から、大衆芸術への反発へと移行していきます。美術評論家のクレメント・グリーンバーグは論文のなかでアヴァンギャルドを評価しながらも、具体的な描写を用いる映画や漫画は観客の批評能力を衰えさせるとして「キッチュ」と呼び批判しました。アヴァンギャルドは、時代の変化や新しい作風の誕生に合わせて変化していく表現様式とも言えます。