カット・アウト

カット・アウトとは、20世紀に活動したアメリカの画家ジャクソン・ポロックが制作した作品シリーズのことです。1948~1950年にかけて制作されており、画面の一部を切り取っているのが特徴。なかには明らかに人型に切り抜いているものもあり、何を表しているのか、現在でも議論を呼んでいます。現在は岡山県倉敷市にある大原美術館の『カット・アウト』や、ドイツのシュトゥットガルト市立美術館所蔵の『ナンバー7, 1949, アウト・オブ・ザ・ウェブ』など、合計6点が存在しています。

カット・アウトの種類は、大きく2つに分けられます。1つ目は、キャンバスなどの画面を絵具で埋め尽くしてから形状を切り抜き、裏張りをマウントさせたもの。キャンバスの画面は手首をスナップさせたり腕を振ったりして顔料を定着させる「ドリッピング(ポーリング)」という技法で着色しているものが多く、複雑な色合いを実現しているのが特徴です。また、画面から任意の形を切り抜き、その切り抜いたものを他の作品に添付させたものもあります。

ジャクソン・ポロックはアメリカの抽象表現主義の画家として高い評価を得ていましたが、1951年ごろから晩年にかけては混迷期に突入。カット・アウトは、その混迷期への突入前後に作られました。また、同時期に抽象的な表現がほとんど失われたとされるオールオーバー・ペインティングを制作していたことから、ジャクソン・ポロックは当時、抽象性を復活させる何らかの手がかりを模索していたのではとも考えられています。