サミュエルオールコック

サミュエルオールコックとは、イギリスのコブリッジという街で創業した磁器メーカーのことです。ティーカップやプレートといったテーブルウェアを中心に、さまざまな磁器製品を生産していました。金彩をふんだんに使用した豪華さと華やかな色絵が魅力で、芸術品や美術品のような美しさを備えています。

サミュエルオールコックが創業した時期は、1828年です。1830年にはバーズレムにも工場を建て、コブリッジ工場との二拠点体制で生産を行っていました。白くて滑らかなボーンチャイナの美しさが評判を呼び、1849年に創業者のサミュエル・オールコックが亡くなった後も家族が一丸となって工場を経営し、雇用者の人数が700人近くになるまで成長しました。

しかし産業革命の波には抗えず、1851年のロンドン万国博覧会をピークに衰退の一途をたどり、1853年にはコブリッジの工場が閉鎖することに。1859年に買収され、翌年の1860年から「サー・ジェームズ・デューク&ネフューズ」の名で磁器生産を再開します。サミュエルオールコック時代の製法をそのまま受け継ぎ、上質な磁器を作りました。

サミュエルオールコックの磁器の特徴は、金彩の使い方と物語性のある絵柄です。金彩を器全体に緻密に施したものや、装飾として用いたものが多く、場の主役になれる製品がたくさんあります。ティーカップ&ソーサーのなかには、カップの底面に穏やかな港湾図、ソーサーの底面に荒れ狂う海を航海する図を描き、相反する絵柄からは物語性を感じられるものもあります。見る人の気分を明るくしたり、創造力を刺激したりするのが、サミュエルオールコックの磁器の特色です。