シャンティイ

シャンティイとは、パリの北側に位置するオワーズ県のコミューン(自治体)の名前です。古くからフランス名門貴族と深い関りがあり、18~19世紀にかけては陶磁器の一大生産地として栄えました。近年、シャンティイで生産された陶磁器はアンティーク品として、世界中のコレクターから人気を集めています。

シャンティイが陶磁器の産地として発展する礎を築いたのは、ルイ・アンリ・コンデ公というフランスの貴族です。ルイ・アンリ・コンデ公は、かねてより東洋の文化に興味を持っていました。日本や中国から陶磁器を輸入する莫大な費用を削減できればと思い、シャンティイで東洋風の陶磁器を生産することを決めたそうです。ルイ・アンリ・コンデ公は1730年に工房を開き、その工房周辺の通りは「rue du Japon(日本通り)」と呼ばれていました。

シャンティイの陶磁器の特徴は、軟質磁器ならではの柔らかい風合いと、東洋の陶磁器をモチーフにしたデザインです。軟質磁器の製造は難易度が高いのですが、シャンティイでは食器・小物入れ・香炉などさまざまな製品が登場しており、当時の職人たちの技術の高さが伺えます。デザインは日本の佐賀県で生産される伊万里焼の「柿右衛門様式」が好まれ、色鮮やかかつ繊細な絵柄をあしらった製品が多く造られました。

優れた陶磁器をたくさん製造していたシャンティイですが、フランス革命(1789年)の影響でイギリス人の手に渡りました。そして19世紀中ごろにひっそりと姿を消し、現在はシャンティイで作られた陶磁器は希少性の高いものとして扱われています。