ダゴティ

ダゴティとは、19世紀初頭に活動していたフランスの陶磁器工房のことです。芸術分野に長けた一族に生まれたピエール=ルイ・ダゴティによって開窯されました。ピエール=ルイ・ダゴティは当時有力だった工房で陶磁業を学び、パリのイタリアン通りでの絵付けの経験を経て1800年に自身の工房を持ったと伝わっています。

ダゴティの陶磁器の特徴は、奇抜かつ個性的なデザインです。カップのハンドルをトカゲのような爬虫類にしたり、金をふんだんに使用した豪奢な造りにしたりと、見る人を飽きさせないさまざまな工夫を施しています。朱漆を思わせる赤色やマット・ブルーのような、独自の研究を重ねて生み出した顔料も用い、存在感のある作品を製造しました。

ピエール=ルイ・ダゴティが1800年にダゴティを開窯した後、1804年には当時の皇后ジョセフィーヌの庇護により、ヴェルサイユ宮殿へ製品を供給することもありました。贈答品としても人気を博し、開窯してすぐにパリ随一の工房として発展します。1815年からはマリー・アントワネットの娘であるマリー・テレーズ・シャルロットの庇護下に入り、陶磁器の生産を続けました。

しかしダゴティの興隆は長くは続かず、経営難・資金難に陥ったため、1823年に工房がドニュエルへと売却されました。現在は帝政期のパリで高品質な陶磁器を製造した窯のひとつとして高く評価されており、特徴的な形状や意匠に注目が集まっています。ダゴティはナポレオンが生きた時代を象徴する陶磁器として、今もなお世界中のアンティークファンを魅了し続けている工房です。