ダダイズム

ダダイズムとは、1910年代中ごろに発生した芸術運動です。第一次世界大戦の勃発を背景とし、戦争に対する抵抗や、秩序への否定・攻撃・破壊などを目的としていました。一説によると、ルーマニア(のちにフランスへと国籍を変える)の詩人であるトリスタン・ツァラが、辞書から無作為に選んだ単語をもとに命名したと考えられています。

ツァラは第一次世界大戦中にスイスのチューリヒを訪れ、反芸術的な文芸運動としてダダイズムの活動を開始しました。先鋭的かつ挑発的な活動はヨーロッパ中に衝撃を与え、フランシス・ピカビアやクルト・シュヴィッタースたちが、「コラージュ」「モンタージュ」「アサンブラージュ」などの技法を駆使しながら次々と作品を発表しました。

ダダイズムは、欧米の大都市を中心に活発な活動が行われます。創始者とも言えるツァラが活動していたチューリッヒをはじめ、ニューヨークやベルリンなどでは第一次世界大戦の最中から作品が発表されました。パリやアイルランドの首都であるダブリンは、第一次世界大戦終結後に流行。日本では1920年代前半に、文学作品を中心にダダイズムの影響を受けたものが生み出されました。

爆発的な人気を博したダダイズムですが、ヨーロッパでは1920年代中ごろになると勢いを失います。ツァラと、ツァラをパリに招いたアンドレ・ブルトンとの対立が激化し、離脱したブルトン派はシュルレアリスムを開始したためです。2人の和解後はツァラもシュルレアリスムに合流し、ダダイズムの理念はシュルレアリスムに継承されるようになりました。