デフォルマシオン

デフォルマシオンとは、絵画や彫刻などを制作する際、対象物の形状を変形・歪曲させることです。日本では、フランス語の「デフォルメ」が定着しています。デフォルマシオンは古代から美術作品の制作に取り入れられるほか、風刺画・イラスト・漫画・アニメの絵画表現でも確認することが可能です。

対象物を変形・歪曲させたものは全てデフォルマシオンだとは言い切れないのが、デフォルマシオンの難しいところ。一般的には、芸術家や作者本人の内的な主観を反映させるときや、今ある美術に基礎を置きつつ新たな美術を創り出そうとするときに対象物の形状を変形・歪曲させたものをデフォルマシオンと解釈します。また、デフォルマシオンは元となる対象物が何だったのかをイメージさせる必要があるため、単に現実的ではない形状を表現するだけでは、デフォルマシオンには該当しない場合もあります。

デフォルマシオンは、古代エジプトの絵画からも伺うことができます。顔は横向きに、目と身体は正面を向いた、通常の人体では実現できない状態を描いた作品がよく見られます。この様式は古代エジプトにおける絵画様式として意図的に決定されていたことから、デフォルマシオンの一種と考えることが可能です。

中世から近世にかけての欧米でも、デフォルマシオンを取り入れた作品が見られます。エル・グレコは、『第五の封印』で通常ではあり得ない10頭身の人物を描きました。ほかにもフランスの詩人であるユーゴーは、額を極端に広く描いた戯画のモデルにもなっています。