ナイーヴアート

ナイーヴアートとは、正式に美術教育を受けていない人物が作成した作品のことです。作家は独学で作品を制作するため、独創性があり素朴な作風なのが特徴。別名「素朴派」と呼ばれることもあります。作品を制作する際に用いる技法よりも、「何を描くか」を重視しており、平面的かつ彩色に富んでいる点も特色です。

ナイーヴアートが評価されるようになったのは、20世紀の初めごろ税関に勤めていたアンリ・ルソーが作品を展覧会に出品してから。ナイーヴアートの作家は芸術家を本職としているのではなく、他の仕事で生計を立てながら活動している人物が多い傾向にあります。普段従事している仕事の様子が作品に反映されやすいのも、持ち味の1つです。

ナイーヴアートの代表的な作家の1人に、アンナ・メアリー・ロバートソン(通称:グランマ・モーゼス)が挙げられます。彼女はもともと農場を経営していましたが、晩年に創作活動を開始し、田園風景や農民を描きました。ほかにも、船具を扱っていたアルフレッド・ウォリスは海や船にまつわる作品を、フランス郵便局で働いていたルイ・ヴィヴァンはパリの街並みを描いた作品を残しました。

その後ナイーヴアートの作風はモダニズム作家たちも援用するようになります。類似する用語として「アウトサイダー・アート」や「アール・ブリュット」などがありますが、これらは美術教育を受けていない人物の中でも、特に囚人と精神病患者が描いた作品を指す場合が多いです。