ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア

ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアとは、1970年代後半から1980年代初頭にかけてイギリスで見られた、彫刻作品の動向のことです。構成を重視して抽象的に表現する傾向にあった1960年代のイギリスの彫刻作品の、次世代の作品群とも言えます。

ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアの作品の共通点は、有機的な形状やボリューム感を復活させ、近代主義の行き詰まりを打開しようとする「ポスト・モダニズム」の考えを表現しているところです。合理と非合理、抽象と具体、科学と芸術など、相反するものを対比して表現していた近代主義を覆し、ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアの作家たちはより自由で柔軟な作風の作品を制作しています。

ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアの作家たちは思想面での共通点が伺える一方で、テーマや作品の制作に使う材料などはかなり異なります。代表的な作家であるリチャード・ディーコンは、プラスチック、ラバー、金属などを素材に、生物的な形状を感じられる作品を残しています。他方でトニー・クラッグは、プラスチック破片や工業廃棄物を自由に組み合わせた作品を制作し、視覚的に審美性や科学性などを訴えています。

作品に使用する素材や、表現している形状などをもとに考察を広げることで、作家本人が思い描いていることを考察するのが、ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアの鑑賞のポイントです。ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュアの動向は10年にも満たない期間でしたが、現在も時たま特集展が開催されることがあり、一定の評価を得ています。