ビザンティン美術

ビザンティン美術とは、5~15世紀にかけて東ローマ帝国で発達した美術のことです。古代ギリシア・ペルシア・ローマの美術を継承しつつ、東方やキリスト教の要素も取り入れています。金地による装飾や鮮やかな色彩、荘厳な美などが特徴です。作品のジャンルは壁画・挿絵・金銀細工・建築物・七宝など多岐にわたります。

初期のビザンティン美術では、東ローマ帝国の首都であるコンスタンティノープルでハギア=ソフィア大聖堂が建築され、モザイク壁画・フレスコ画・イコンなどが盛んに制作されました。しかし730年にレオ3世が発令した偶像破壊令とそれに伴う混乱をきっかけに、ビザンティン美術でも立体の神像は制作せず、絵柄も抽象化が進められました。

混乱が落ち着くと、現在のビザンティン美術に近い様式が確立されます。一例を挙げると、イコンの場合は初期キリスト教美術と同様に、首を少し傾けた人物がよく描かれました。そしてしばらく時間が経過すると、描いている人物にちょっとした感情を表現するようにもなりました。

東ローマ帝国が15世紀に滅亡した後も、オスマン帝国のイスラム美術やイタリアン・ルネサンスをはじめ、ビザンティン美術は中世ヨーロッパの芸術に大きな影響を与え続けます。そして昔から続くビザンティン美術の様式も、ギリシア正教とともに今の時代まで受け継がれました。伝統的なビザンティン美術は現在も形を大きく変えることはなく、千数百年前の様式を彷彿とさせる作品が制作されています。