二風谷アットゥㇱ

二風谷アットゥㇱ(にぶたにあっとぅし)とは、北海道沙流郡平取町(ほっかいどうさるぐんびらとりちょう)で生産されている織物のことです。二風谷の語源は、アイヌ語で「木が生い茂るところ」を意味する「ニプタイ」。木材が豊富な土地柄を活かし、二風谷アットゥㇱに使う糸は、オヒョウやシナノキといった樹木の皮を素材としているのが特徴です。耐久性と耐水性に優れていることから、かつては船乗りたちの仕事着としても愛用されていました。

アイヌ語は口承で伝わっているため、二風谷アットゥㇱがいつ頃から生産されていたのかは定かではありません。文書に登場するのは18世紀以降で、当時は和人との交易で送る工芸品として需要があったようです。19世紀末になると、北海道を旅した外国人の著書や研究記録にも、アットゥㇱの生産状況に関する記述がみられます。2013年になると、二風谷アットゥㇱは二風谷イタと並び、北海道で初めての国指定の伝統的工芸品に登録されました。

二風谷アットゥㇱを生産する際は、現在も100年前と同じ様式の道具を使用しています。まず行うのは、アットゥㇱを織るのに使う糸づくり。樹皮をはぎ取りやすくなる6月に素材を採り、荒皮を剥いだあと釜で柔らかくなるまで煮込みます。煮えて出てきた樹皮のぬめりを流水で洗い流して乾燥させ、2mm程度の一定の細さに裂いたら糸づくりは完了です。そして糸を織り機にかけ、ちょうどよい大きさになるまで織り進めたら、二風谷アットゥㇱの出来上がりです。