備前焼

備前焼(びぜんやき)とは、岡山県備前市で生産している焼き物のことです。日本六古窯の1つにも数えられています。備前焼の特徴は、究極にシンプルな造りであるところ。釉薬を塗ったり絵付けをしたりせず、焼成時の窯変のみで模様を生み出します。土の性質や焼成窯への詰め込み方、温度変化などの要因が重なり合って模様ができるため、全て異なる意匠になるのが特色です。

焼成時は1200~1300度の高温で、7~12日と長期間焼き続ける分、硬くて割れにくい製品を生産できます。備前焼の耐久性の高さは「投げても割れない」と言われるほど。置物や壺だけでなく、強度が求められるすり鉢や屋根瓦でも備前焼は人気があります。

備前焼の起源は、古墳時代にまで遡ると考えられています。岡山市内には古墳~平安時代の須恵器用の窯の跡が点在しており、これらの窯が備前焼へと発展しました。鎌倉時代には水がめやすり鉢など、実用的な焼き物の生産を開始します。当時作られた備前焼は「古備前」とも呼ばれ、既に優れた耐久性で評判を得ていました。

室町時代以降の茶道の発展に伴い茶器・茶道具としての人気が高まりますが、江戸時代の茶道の衰退とともに備前焼も実用品の生産に戻ります。この傾向は明治大正の頃も続き、昭和時代になってから芸術性を求める動きが見え始め、人間国宝を5名輩出するまで至りました。2017年には日本遺産「きっと恋する六古窯」の構成遺産の1つになり、毎年10月には「備前焼まつり」が開催されており、現在も多くの人に親しまれています。