塩沢紬

塩沢紬(しおざわつむぎ)とは、新潟県魚沼市周辺で作られている織物のことです。紺や黒といった落ち着いた雰囲気の地色に白・黒・紺などを使って模様を織り込んでおり、渋く上品な印象の織物を生産しています。他の絣と比べると薄手でさらりとした風合いがあり、着心地がよいのが魅力です。

塩沢紬の歴史は、奈良時代にまで遡ります。天平勝宝年間(756)に建てられた正倉院の宝物のなかには、現在の新潟県魚沼市近辺に該当する地域で織られた麻織物「越後上布」が現在も収められており、当時から織物が生産されていたことが伺えます。寛文年間(1661~1672)に越後上布の技術を応用し、絹織物を織る技術が開発されました。真綿糸を使う塩沢紬が生まれたのは、江戸時代の明和年間(1764~1771)のことです。

昭和50年(1975)には、国の伝統的工芸品に指定されました。塩沢紬は日本三大紬のひとつにもかぞえられており、紬の最高級品として人気を集めています。塩沢で作られている織物のうち約6割は塩沼紬ですが、近年は職人の高齢化等の理由により生産者の人口が減少し、希少価値が高くなりつつあります。

塩沢紬は職人が紬糸を1本1本手作業で括り、染料を摺りこんで作っています。また時間をかけて丁寧の織っていくため、とても繊細な模様を表現することが可能です。「字絣」や「亀甲絣」など、塩沢紬だからこそ表現できる模様がたくさんあります。近くからは模様の美しさ、遠目からは生地の上質感を堪能できるのが塩沢紬の魅力です。