宮城伝統こけし

宮城伝統こけしは、宮城県で作られている伝統工芸品です。昭和56年に、国指定の伝統的工芸品になりました。宮城伝統こけしの特徴は、頭と胴だけのシンプルな姿。素朴で単純なシルエットですが、5つの系統によって作風が異なります。また、分業制が一般的なこけし作りにおいて、宮城伝統こけしは職人1人で全ての工程を行うため、職人個人の個性が出やすいのも特色です。

宮城伝統こけしの5つの系統とは、遠刈田系・弥治郎系・鳴子系・作並系・肘折系です。遠刈田系は、現在確認されている系統のなかで、最も古いもの。頭部が比較的大きく、切れ長の目と筋が通っている鼻が特徴です。弥治郎系は、宮城県白石市の弥治郎地区で誕生しました。頭部には、ベレー帽のようなロクロ線を描いています。

鳴子系は、その名のとおり鳴子温泉で発達しました。くびれた形の胴体と、回すとキイキイと音が鳴る頭が有名です。作並系は、子どもでも握れるよう、胴体が細いこけしが多い傾向にあります。肘折系は、山形県の肘折で生まれた系統。はっきりとした目鼻立ちと、肩が張っている胴体が、力強い印象を与えます。

日本でこけしが初めて作られたのは奈良時代でしたが、宮城伝統こけしの生産が始まったのは、安土桃山時代。東北地方に、こけし作りに必要な技術を身につけた木地師が住み始めたのがきっかけと考えられています。当初は宮城伝統こけし5系統のうち最古の遠刈田系で、子どもへの温泉土産として親しまれていました。明治時代中期以降は大人の鑑賞用としても好まれるようになり、宮城伝統こけしの名が広く知られるようになりました。