景徳鎮

景徳鎮とは、現在の中国江西省景徳鎮市とその周辺にある陶磁器の名産地のことです。景徳鎮で焼かれた陶磁器そのものを、「景徳鎮」と呼ぶ場合もあります。考古学調査によると、景徳鎮で陶磁器の生産が始まったのは9~10世紀と推測されています。当初は「昌南鎮」という名称が使われ、見た目はシンプルなものでした。

「景徳鎮」と呼ばれるようになったのは北宋の皇帝である真宗が在位していた時代で、当時の元号である「景徳(1004~1007年)」から取ったとされています。元の時代(1279~1368年)になると宮廷には窯の管理を担当する役所が創設され、公用の陶磁器の生産が始まりました。景徳鎮にも公営の陶磁器工房ができ、民間の工房と刺激を与えあいながら発展します。

景徳鎮で生産された陶磁器は世界各国に輸出され、朝鮮半島や日本といった東アジアのみならず、17世紀にはヨーロッパの王侯貴族の間でも大流行しました。ドイツのマイセンをはじめとしたヨーロッパの老舗陶磁器メーカーのなかには、景徳鎮の陶磁器を参考に創業したところもたくさんあります。

景徳鎮の陶磁器の特徴は、耐久性に優れた白磁と美しい絵付けです。景徳鎮の陶磁器にはカリオンを含んだ土を使用しており、高温でも焼けるほど耐火性に優れています。焼き上がりの質感はとても硬く、繊細な見た目とは裏腹に頑丈なものでした。

絵付けは特に「青花(せいか)」というものが美しく、青一色の濃淡のみで表現される草花や風景は優美な印象を与えます。ほかにも五彩・紅釉・玲瓏などさまざまな絵付けの技法が発達しており、多彩な表現を用いているのも景徳鎮の魅力です。