木口木版

木口木版(こぐちもくはん)とは、木口板を使って制作する版画のことです。「西洋木版」とも呼ばれており、18世紀末から19世紀初頭にかけて、イングランドの版画家であるトーマス・ビウイックが発明及び発展させました。当初、木口木版は平圧プレス機を使うと活字と一緒に印刷できるため、書籍の挿絵を印刷するための技術として発展します。のちにヨーロッパにとどまらずアメリカにまで伝わり、木口木版はさらに広まっていきました。

木口木版に使用する木材は、板目木版よりも硬いのが特徴。密度があるツバキ・梨・カエデなどが好まれています。しかし、いずれの木材も生産量が少なく、木の太さと同じサイズまでの板しか取れないため、四角く裁断した板を繋ぎ合わせた版木も作られています。

木口木版を制作する際は、表面の研磨から取りかかります。サンドペーパーの番手を変えながら、表面の傷や裁断の跡がなくなり、鏡面のようにツルツルになるまで磨き上げます。版板を彫り進めるときは、「ビュラン」という刃の先端が斜めに切り落としてある道具を使うのが一般的。ビュランは直線方向にしか彫り進められないため、方向を変えるときは版板を動かします。曲線を描くときは、「クッサン」という亀の甲羅を2枚張り合わせたような道具が活躍します。

印刷する際は、リトグラフ用と銅版画用のインクを混ぜたものを使用します。インクの質感が柔らかいと、彫った溝にインクが埋まってしまうため、少し硬めになるよう調節するのがポイントです。印刷用紙は雁皮紙のような薄くて丈夫なものを用い、インクを乾燥させた後補強のために別の紙を重ね合わせます。