未来派

未来派とは、20世紀初頭にイタリアで生まれた芸術運動の一派のことです。1909年に、イタリアの詩人フィリッポ・マリネッティが、フランスの日刊紙『フィガロ』に「未来派宣言」を掲載したことで始まりました。1909年以降も何度か宣言文が掲載され、その都度共感する者が集まり大きな芸術運動に成長しました。

未来派の特徴は、伝統的な芸術や社会を否定し、新時代の工業機器や都市化に欠かせない機能美やスピード感、ダイナミックな表現を好んだところです。スポーツ、自動車、都市、鉄道などは、未来派に属する芸術家が好んだテーマの代表例です。さらに、大きな音を放つ巨大な機械をたくさん使用する戦争の賛美を行う人物まで現れました。

未来派が生まれた背景には、産業革命による工業製品の出現や、中世の封建体制から現代の資本主義社会への転換が発生したことなどがあります。伝統的な価値観の変化とそれに伴う不安感が原動力となり、表現主義芸術が興隆しました。表現主義芸術のなかでも、未来派は社会の変化を好意的に受け取り、近代文明や機械による産物を積極的に作品に反映させています。

未来派の中心的な画家としては、ウンベルト・ボッチョーニ、ジーノ・セヴェリーニ、ジャコモ・バッラが挙げられます。ウンベルト・ボッチョーニは絵画『朝』や彫刻『空間における連続性の唯一の形態』、ジーノ・セヴェリーニは絵画『大通り』『装甲列車』などを制作しました。ジャコモ・バッラは他の未来派とは違い、機械や暴力からは距離を置いており、機知に富んだ作品を残しています。代表作は、絵画『鎖に繋がれた犬のダイナミズム』です。