板目木版

板目木版(いためもくはん)とは、板目板を版木とした木版画のことです。板目板は、木の繊維と同じ方向に切り出した板を指します。木を輪切りにするように切り出した木口木版と比べると、柔らかな質感で彫り進めやすいのが特徴です。日本では桜・桂・朴(ほお)、西洋では梨・くるみ・桃などが材木としてよく使われます。現在は作品の大型化、無垢材の価格の上昇などが影響して入手しにくくなっているため、シナの木の板目板を使った「シナベニヤ」が普及しています。

板目木版に使用する絵の具は、水性絵具と油性絵具の2種類です。水性絵具の場合、墨汁や透明水性絵具などを使用します。作家や作品によっては、膠・アラビアゴム・顔料を用いて絵の具を自作することも。油性絵具と比べると、水性絵具の方が刷り上がった作品に板目が写りやすいのが特色です。油性絵具を板目木版に使用する際は、リトグラフ用のインクなどが使われます。

板目木版の制作工程は、下絵の転写から始まります。下絵が転写できたら、次は彫り。版板に残したい部分の輪郭をなぞるように彫刻刀で彫り、その後不要な部分をさらに削り取っていきます。

版板が完成したら、続いて摺りに取り掛かります。摺りに使う絵の具が水性か油性かで作業の方法が異なるため、絵の具の性質に合わせた対応が必要です。水性絵具を使うときは凸部に絵の具を乗せて版画用のブラシでよく伸ばし、油性絵具の場合はローラーでインクを付けてバレンやプレスで絵具を転写します。