江戸切子

江戸切子とは、東京で生産されているガラス工芸のことです。江戸時代末期に、ヨーロッパのカットグラスの技法を取り入れて誕生しました。江戸の大伝馬町(現在の東京都中央区日本橋大伝馬町)でビードロ屋を営んでいた加賀屋久兵衛らが、海外のガラス製品に切子細工を施したのが始まりとされています。

江戸切子の特徴は、ガラスの厚みが比較的薄いことと、切子細工が繊細なことです。鹿児島県のガラス工芸として知られる薩摩切子では厚さ2~3mmのガラスを削るのに対し、江戸切子では1mm弱のガラスを使用しています。ガラスが薄いぶん切子細工のシャープさが際立ち、上からのぞき込むと万華鏡のような輝きが見られます。

また細工を施す際は、文様を描く線をひとつひとつ手作業でカットするのが一般的。気が遠くなるような作業量ですが、仕上げに研磨するとクリスタルガラスのような華やかな輝きが現れます。魚子・六角籠目紋・菊花紋・麻の葉紋といった約20種類の伝統的な文様を受け継ぎつつ、新しい文様の開発を進めたり、「青×金×透明」のような複数の色を組み合わせた作品が制作されたりしています。

江戸切子では、主にグラスやガラス器といった食器類を生産しています。繊細な切子細工による華やかな輝きや、縁起の良い伝統文様が人気を集め、結婚祝い・還暦祝いなどの贈答品としても評判です。また近年はガラスの芸術作品の制作や、人気アニメ・ゲームとのコラボなど、活動の幅を広げています。2002年(平成14)には経済産業大臣指定の伝統的工芸品に登録され、伝統を守りつつ進化し続けているガラス工芸です。