砥部焼

砥部焼(とべやき)とは、主に愛媛県砥部町で生産されている焼き物のことです。特徴は、耐久性に優れている点と、手作り感がありあたたかみを感じられるところ。砥部焼は他の産地の焼き物と比べるとやや厚手で、重量感があります。ひびが入ったり欠けたりしにくく、夫婦喧嘩で投げつけても割れないという逸話から、「喧嘩器」と呼ばれることも。また、砥部焼は手作り成形が中心のため、独特の風合いが陶芸の愛好家の間で評価されています。

砥部焼は、江戸時代中期に生産が開始しました。大洲藩九代藩主の加藤泰候の時代に、藩の財政を立て直すため、陶器を作り始めたようです。廃藩置県を経て各地の技術者の往来が盛んになると、砥部焼にも瀬戸・唐津・京都などの技術が入り、量産が可能になりました。同時代に、販路も全国へと拡大。一時期は輸出商品として、海外に出荷されたこともありました。現在は食器類をはじめとした日用工芸品として親しまれています。昭和51年には、国指定の伝統的工芸品になりました。

砥部焼の生産は、土づくりから始まります。採石場で陶石を採り、ほかの材料を混ぜたり空気を抜いたりして、作陶に適した土を作ります。土ができあがったら、ロクロで成形してサンドペーパーなどで表面を磨き上げます。乾燥と素焼きが終わると、いよいよ下絵付け。絵柄や模様を手作業で描いたら、釉薬をかけて本焼きです。本焼きでは、器を1,300度の窯で15から24時間かけて焼き上げます。焼き上がったものの熱が触れる状態にまでなったら、砥部焼の完成です。