透視図法

透視図法(とうしずほう)とは、芸術作品において視覚的な遠近感を表現するための手法のことです。人が持つ、「遠くへ行くほどすぼまっていく2本線を平行だと認識し、奥行きを感じる」という特性を活かしています。電車が通るまっすぐな線路をイメージすると、わかりやすいでしょう。人に奥行きを感じさせる線の特性を調べ、科学的に体系化したのが、透視図法と言えます。

透視図法の歴史は古く、ヨーロッパでは古代ギリシア・ローマ時代の作品にも見られます。「線遠近法」として透視図法が体系化され始めたのは、15世紀のイタリアのルネサンス期です。建築家のブルネレスキが線遠近法を生み出し、同じく建築家のアルベルティが体系化しました。17世紀ごろに、フランスのザデルクやモンジュが完成させたと考えられています。

透視図法には、一点透視図法や二点透視図法など、様々な種類があります。一点透視図法は1つの消失点へ向けて複数の平行線を、二点透視図法では角度の異なる2つの平行線群をそれぞれ収束させる技法です。ほかにも、3つの平行線群をそれぞれ収束させる三点透視図法、消失点が存在しない零点透視図法などが見られます。

透視図法の作品として有名なのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』。中央にいるイエスに向かって線が収束している、一点透視図法を使用しています。ほかにも、マサッチオの『聖三位一体』、ペルジーノの『ペテロへの鍵の授与』が挙げられます。いずれも平行線の消失点に視線を集中させられる、透視図法を用いた代表作です。