銘(めい)とは、美術品に付けられた作品の名称のことです。美術的価値が高い等の理由で、特に優れた作品にのみ銘を付けます。優れた作品にのみ銘が付くため、鑑定の際は銘の有無が重要な判断材料の1つになることも。刀剣・漆器・陶磁器など、幅広い分野の作品に銘が付けられます。

銘が付いている代表的な作品は、国宝の『白楽茶碗・銘「不二山」』や『青磁鳳凰耳花生・銘「万声」』などです。白楽茶碗・銘「不二山」は江戸時代初期の書家や陶芸家として活動した本阿弥光悦の作で、現存する10点のなかでも特に高く評価されています。青磁鳳凰耳花生・銘「万声」は12世紀から13世紀にかけて中国南部を統治していた南宋で作られたもの。18世紀ごろの随筆『『槐記』』によると、日本に伝来して以降、徳川家光や東福門院などの有力者の手に渡り、後西天皇が銘を付けたと伝わっています。

また、銘は作品の名称ではなく、作品に刻まれた制作者名のことを指す場合もあります。特に刀剣は制作者名(刀工名)を刻んだ作品が多く、本人の手によって鍛刀されたか判断するための大切な情報の1つです。制作者名が刻まれた代表的な作品としては、国宝の『太刀・銘「吉平」』や『短刀・銘「則重」』などが挙げられます。

銘は制作者名以外の情報を刻んでいる事例もあるため、真贋の判断等には専門的な知識が求められます。制作年月日を記した「年紀銘」、刀剣の所有者の名前を刻んだ「所持銘」など種類は様々です。