隈取り

隈取り(くまどり)とは、画面にぼかしや濃淡を入れる日本画の表現技法です。別名、「暈(うん・ぼかし)」と呼ばれることもあります。画面中に隈取りを施すことで、立体感や遠近感の表現、形状の強調など、様々な効果が期待できます。隈取りを施す場所や方法によって、様々な種類があるのが特徴。例えば、対象が白く浮かび上がっているように見せる隈取りは「外隈」、下地より明るい色でぼかす方法を「照隈」、線の片方だけをぼかすときは「片ぼかし」と言います。

日本画を制作する際は、輪郭線を引く「骨描き」が終わった次の手順として、隈取りを行います。先に塗った墨や絵の具が乾ききらないうちに、水を含んだ筆や刷毛で色をぼかしていくのです。まずは彩色に影響がない程度の薄い濃淡から取りかかり、全体のバランスや完成イメージをもとに濃い墨を用いて、陰影をつけていきます。隈取りの際は、骨描きの線が消えないよう、注意が必要です。白黒で表された作品の全体像は、その後の彩色の手順でも活用できます。

隈取りを行うときは、隈取り専用の「隈取筆」を使うのが一般的。隈取筆は穂が太く丸みを帯びた形をしており、水を含みやすく、毛のスジが入ることがないため、美しいぼかしを描くことができます。ほかにも、彩色筆や平筆などでも隈取りを施すことは可能です。絵の具用の筆と隈取筆の2本を交互に使用する「返し筆」では、隈取筆1本とはまた違った表現で描けます。水の含有量だけでなく、使用する筆の種類でも印象を変えられるのが、隈取りの特色です。