飛騨春慶

飛騨春慶(ひだしゅんけい)とは、岐阜県高山市を中心に生産されている漆工品です。飛騨春慶の歴史は、今から約400年前の慶長年間にまで遡ります。高山城下の名工・高橋喜左衛門が偶然割った木目の美しさに心を打たれ、お盆を作って第二代高山城主の子・重近に献上したことがありました。そのお盆を気に入った重近は、御用塗師・成田三右衛門に漆を塗らせることに。すると名陶「飛春慶」に似ていたため、「飛騨春慶」の名が付けられたと伝わっています。

飛騨春慶の制作手順は、大きく4段階に分けられます。まず、木材をお盆やお椀の形に製作します。次に目止め、着色、下塗りなどの下準備を行い、表面を均一化したり、漆が木地に吸収され過ぎないような加工を施したりします。続いて生漆を摺りこむ「摺り」という作業を経て、器の強度と光沢を上昇させます。この工程の際に、木目が美しく浮き上がり、飛騨春慶ならではの特色が伺えるようになるのです。最後に仕上げ塗りを施し、乾燥させたら完成です。

飛騨春慶の特色である、美しい木目と透けるような材質の秘訣は、仕上げ塗りのときに使用する透漆(すきうるし)です。透漆は、数ある漆のなかでも漆特融の色素が抜けるのが比較的早く、透けが良い漆のこと。透漆を使うことで、木材ならではの温もりと、艶やかな質感がバランスよく共存した漆工品が作れるのです。主な生産品である食器類以外にも、ボールペン、時計、カードケース、写真立てなど、様々な製品が作られています。