駿河雛人形

駿河雛人形とは、静岡県志太郡を中心に生産されている雛人形のことです。他の産地の雛人形と比べると、サイズが大きいのが特徴。生産地周辺では米の生産が盛んで、太い藁胴(わらどう)を入手しやすい環境だったことが影響していると考えられています。平成6年(1994)に、経済産業省指定の伝統的工芸品に登録されました。

駿河雛人形の起源は、江戸時代に生産されていた「天神」という人形だと考えられています。天神とは菅原道真を模った人形で、駿河雛人形はこの天神に衣服を着せたことをきっかけに生産が始まったとされています。

本格的な駿河雛人形づくりが始まったのは意外にも後世になってからで、昭和30年代ごろ(1950年代後半~1960年代前半)に日本各地から職人を招き、技術の向上を図りました。昭和40年代には雛人形の胴体部分の国内シェアは約70%占め、静岡県志太郡は雛人形の一大産地として知られるようになりました。

駿河雛人形づくりでは、上半身と下半身を分けて生産する分業制を採用しています。特に下半身の生産には力を入れており、笏や扇を持つ手の美しさや豪奢な衣装は見る人を魅了します。雛人形の両腕を曲げる工程「振り付け」は特に技術量が求められ、腕の曲がり方から誰が製作したかを見分けることも可能です。

近年は生活スタイルの変化に合わせ、従来の雛人形に加えて小型の雛人形も作るようになりました。また、雛人形の衣装に使う美しい生地を活かした雑貨も生産しています。雛人形に使用する部品づくりにも注力しており、駿河雛人形は日本の伝統文化を支えている工芸品です。