ジャコビアン様式とは、17世紀初頭にイギリスで流行した家具・美術・建築などの様式のことです。当時のイギリス国王だったジェームズ1世のラテン語名をもとに名付けられました。広義では、ジェームズ1世の後に即位したチャールズ1世・チャールズ2世・ジェームズ2世の時代も含まれています。
細かく分けると、ジェームズ1世の時代が前期ジャコビアン様式、チャールズ2世の頃に開花したのが後期ジャコビアン様式とされています。ジェームズ1世とチャールズ1世が清教徒革命で処刑され、チャールズ2世が即位するまでの間はクロムウェルが政権を握っていました。クロムウェルは家具に装飾を施すことを嫌い、一時期は装飾のない家具が作られました。
家具分野では従来よりも表現の幅が広がり、装飾性が増したのがジャコビアン様式の特徴です。オーナメントには唐草模様、椅子に脚には花瓶型やボビンレッグなどが取り入れられ、見た目の華やかさや軽やかさが加わった家具が作られるようになりました。バラの紋章や果実などの彫刻を施しているのも、ジャコビアン様式の家具の特色です。
また機能面でも改善が見られ、チェストには脇すべりが導入されて従来のものよりスムーズに引き出しの出し入れができるようになりました。シルエットは左右対称のものが好まれ、ジャコビアン様式の時代ではシンプルでありつつ上質な雰囲気の家具が生産されました。
美術分野では特にチャールズ1世が興味を持ち、美術品の収集や芸術家の招へいに注力します。ドイツ生まれの画家で外交官のルーベンスにはナイトの称号を授与し、その弟子のアンソニー・ヴァン・ダイクは主任宮廷画家に任命され、後世のイギリスの絵画界に大きな影響を与えました。