イズニック陶器とは、トルコ北西部に位置するブルサ県の、イズニックという街で生産されている陶器のことです。陶器の原材料である胎土の表面に白土で化粧土を施し、下絵の作成と着色をしたうえで透明な釉薬を塗ってから焼き上げるのが特徴。現在は観光客向けのお土産としても人気を集めています。
イズニックでは少なくとも紀元前7000年には陶器の生産が始まったと考えられており、実際に現地では古い陶片が見つかっています。現在のイズニック陶器の原型となるものは14世紀ごろから生産が開始し、当初は東洋の陶磁器の影響を受け、白地にコバルトブルーで絵付けをしたものが中心でした。15世紀になると絵付けに使われる色の種類が増え、緑・紫・赤などを用いたカラフルな陶器が登場します。
最盛期を迎えたのは16世紀ごろで、当時イズニックを治めていたオスマン帝国の宮廷でも注目を集めました。主流になった模様は、幾何学模様のほか、唐草模様・バラ・カーネーション・チューリップといった草花の文様です。オスマン帝国の君主の住居として使われていたトプカプ宮殿にも、イズニックで作られた陶器のタイルが使われました。
しかしオスマン帝国の衰退や、技術や知識が門外不出だったことなどが影響し、17世紀中ごろからイズニックでの陶器生産は失速するようになります。周辺地域での生産量も、キュタヒヤという街に追い抜かれました。失速開始から400年経った現在、調査研究や技術復興を通じて陶器の街としての再興が進められています。