白磁とは、白い素地に透明な釉薬をかけて作った磁器のことです。白磁が初めて作られたのは6世紀中ごろから後半にかけて中国に存在した「北斉」という王朝です。隋から唐にかけてさまざまな器が作られ、10世紀以降、宋の時代になると、景徳鎮という中国の名窯から、完全な形に近い白磁が生産されたと考えられています。
生産が始まったばかりの頃は、原材料の精製が十分にできず、素地の色は灰色に濁ったものや褐色、釉薬の色は少し黄ばんでいました。唐の時代になるとさらに白さが求められるようになり、素地の上に白化粧土を施したり、半透明の釉薬が使われたりするようになりました。
白磁の特徴は、透き通るように美しい白色です。鉄分などの不純物が少ない粘土を使うことで、焼成すると素地の色は白くなります。白い素焼きの磁器の上から透明な釉薬をかけることで、素地の白さをさらに際立たせています。
中国国内では、特に美しく作られた白磁は、儀式用や公用として重宝されていました。加えて白磁の美しさはヨーロッパの王侯貴族をも魅了し、ドイツのマイセンをはじめ老舗陶磁器メーカー創業のきっかけにもなりました。
白磁を生産する技術が日本に伝わったのは、16世紀ごろと考えられています。文禄・慶長の役のとき朝鮮半島からやって来た陶工が伝えたとも、それ以前から各地で白磁の生産が試みられていたとも言われています。1600年代に肥前(現在の佐賀県と長崎県)の有田で白磁に適した土が見つかったことで、日本でも白磁の生産が定着しました。