ぼかし

ぼかしとは、水彩画を制作するときに使われる技法のことです。絵の具で色を塗った箇所の色の境界を、水を含ませた筆でなぞることでグラデーションを作ります。背景にグラデーションを作ったり、色の馴染みを良くしたり、境界線を分かりにくくしたりと、さまざまな目的でぼかしの技術は使われています。

ぼかしはシンプルな技法ですが、自分の想像通りに色をぼかすには、使用する筆の大きさや筆先の固さなどをよく検討する必要があります。また、実際にぼかすときも、必要な部分を過不足なくぼかすため、筆の向きや水加減にも注意が必要です。自然なグラデーションを作るには、ぼかしに使う筆に含ませる水の量を控えめにして、筆の向きは寝かせ気味の状態で描くのが良いとされています。

ぼかしとよく似ている技法に、「にじみ」があります。ぼかしは絵の具の色が乾く前に水を含ませた筆で色の境界をぼかしてグラデーションを作るのに対し、にじみは紙の上に水を塗った後、水が乾かないうちに絵の具で色を付けるのが特徴です。どちらも淡い色合いや繊細な色の変化を作ることができ、植物画や風景画などさまざまな作品で取り入れられています。

ぼかしの技術を取り入れた作品を制作した画家としては、ドイツのアルブレヒト・デューラーが挙げられます。1471年に神聖ローマ帝国で生まれた人物で、版画家や数学者としても活動しました。ぼかしの技術を使った作品には、1502年制作の『野うさぎ』や、1503年制作の『芝草』があります。