ウェット・イン・ウェットとは、水彩画を描くときに使われる技法のことです。「ウェット・オン・ウェット」とも呼ばれており、紙が濡れている状態のときに、その上から絵の具をさらに重ねます。起源は20世紀中ごろにアメリカの画家が使用したものとされていますが、基礎は中世から存在したと考えられています。
ウェット・イン・ウェットで水彩画を描くと、下の絵の具と上の絵の具が混ざり合い、美しいグラデーションを作ります。水を媒介としているため、色の混ざり方が自然で、ふわっと広がる独特な表現になります。透明感や柔らかさを表現できるのも、ウェット・イン・ウェットの特徴です。日本でも「たらし込み」や「破墨」といった、似たような技法が存在します。
ウェット・イン・ウェットをするときは、まずは「ウォッシュ」をした絵を用意します。ウォッシュとは、水を多めに混ぜた絵の具で色を塗ることです。その後、ウォッシュをした下の絵の具が乾かないうちに、他の色を上から塗り重ねます。色を塗り重ねた後は、自然に色が広がるのを待ったり、画用紙を傾けて色の流れを調整したりします。
ウェット・イン・ウェットに似た技法に、「ウェット・オン・ドライ」があります。ウェット・オン・ドライは、ウォッシュをした絵の具が乾いてから他の色の絵の具を塗り重ねる方法です。色がにじむことなく、はっきりとした輪郭や模様を描けます。水彩画において、ウェット・オン・ドライとウェット・イン・ウェットは、どちらも欠かせない技法です。