ブエン・レティーロ磁器工場とは、スペインに存在した磁器工場のことです。カルロス3世が、ナポリにあったカポディモンテ窯を、領地を手放す際にスペインに移転させたことにより、マドリードで設立しました。設立は1760年で、工場を移転する際、ナポリの磁器職人も移住し、必要な道具や素材もスペインに輸送されたようです。
ブエン・レティーロ磁器工場は王立の工場で、製品はアランフェス宮殿やマドリードの王宮をはじめ、さまざまな施設で装飾品として飾られました。エル・エスコリアル修道院にはロココ調の磁器で全面装飾された部屋もあり、中世のスペインの王宮文化を支えていたことが伺えます。品質の高さは世界的に評価され、製造技術は国家機密とされていました。
ブエン・レティーロ磁器工場で作られた製品の魅力は、とても華やかで装飾性に優れたデザインです。植物の葉や花びらを1枚1枚再現したり、金色で美しく彩色したりしたものが現存しています。葉脈まで表現する繊細さや、素地の白い色合いを活かした上品な配色も見どころです。一部の作品は、アランフェス王宮の磁器コレクションとして、現在も大切に保管されています。
スペインの王族をはじめ、多くの人に愛されていたブエン・レティーロ磁器工場ですが、1808年から1814年にかけて勃発したスペイン独立戦争の影響で、ウェリントンが率いるイギリス軍によって工場と倉庫が破壊されます。その後は再興されることがなく、生産が停止しました。

