ムスティエ陶器

ムスティエ陶器とは、フランス南部にあるムスティエ・サント・マリー村で生まれた陶器のことです。1668年頃にイタリア人修道士が伝えた、白い釉薬の技術がもととなって誕生しました。当初は白い陶器に青で絵付けを施したシンプルな陶器でしたが、次第に華やかな彩色を用い、繊細な花鳥や人々の生活が描かれるようになります。

最盛期は17~18世紀で、ルイ14世がフランスを治めていた時代は、金銀食器の代用品として宮廷で用いられました。この頃に、多色使いの華やかな絵付けが施されるようになったと考えられています。マリー・アントワネットもムスティエ陶器を愛用したと伝わっており、評判はヨーロッパ各国に広まりました。

しかし19世紀になると磁器が流行するようになり、価格競争や需要の変化についていけなくなると、ムスティエ陶器は衰退します。19世紀半ばまでに多くの工房が閉鎖しましたが、20世紀ごろに現代の生活様式や流行に合わせる形で復活しました。現在は技術の保護にも力を入れており、「EPV(Entreprise du Patrimoine vivant)」のマークが付いている販売元では、伝統的な製法を用いています。

ムスティエ焼きの特徴は、「カマイユ・ブルー」と呼ばれる青い装飾です。色の明暗のみで浮彫のような立体感を持たせる技法で、青一色の絵付けでも存在感があります。装飾の種類が豊富なのも魅力のひとつで、ルイ14世の装飾工ジャン・ベランの影響を受けた「ベラン風」という豪華な装飾、フランス革命が終わる頃まで作られた紋章の装飾、人物や動物を小さく描いた「グロテスク装飾」などが用いられています。