歴史画とは、神話や宗教、歴史上の事件などを題材とした絵画のことです。特に17~19世紀の西洋において、歴史画は肖像画や風俗画などを抑え、絵画作品全体のヒエラルキーのなかで最上位に位置付けられていました。当時の西洋絵画におけるアカデミズムでは歴史画が評価する流れがあり、歴史画を制作する画家も大勢いました。
代表的な作品例としては、1830年にフランスのドラクロワが描いた『民衆を導く自由の女神』や、1801年にフランスのジャック=ルイ・ダヴィッドが制作した『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』が挙げられます。前者は1830年に発生したフランス7月革命を、後者はオーストリアに奪われたフランスの衛星国を取り戻すため、1800年にナポレオンがアルプスを越えようとする様子を描いています。
歴史画は17世紀以前から作られており、古代の歴史画は、権力者が戦争の勝利を印象付けるために作らせたものが主流でした。ギリシアで制作された『アレクサンドロス大王の戦』(原作は既になく現在はローマのモザイクによる模作が現存)や、古代エジプトで造営されたラムセス2世の神殿の壁画などが代表例です。
日本でも古くから神話・宗教・歴史上の事件に関する題材には注目が集まっており、平安時代後期以降の大和絵や江戸時代初期に成立した浮世絵などでも、歴史画に該当する作品が制作されています。明治時代になり西洋画が日本に入ってくると、中国やインドの歴史・故事にちなんだ作品も描かれるようになりました。