秩父銘仙

秩父銘仙(ちちぶめいせん)とは、埼玉県秩父市とその周辺の秩父郡の自治体で生産されている織物のことです。特徴は、裏表がないように染色されているところ。裏表がないぶん何度でも仕立て直しがしやすく、長く使用できるため古くから庶民に親しまれていました。

糸は生糸や玉糸のほか、比較的安価な「紡績絹糸(ぼうせきけんし)」を使うことがあったのも、庶民に好まれていた理由の一つです。2013年12月に、経済産業大臣指定の伝統的工芸品の登録を受けました。

秩父銘仙は、第10代崇神天皇の時代に、知々夫彦命が秩父で暮らしていた人々に養蚕と織物の技術を伝えたことが起源とされています。当初は庶民向けの衣服「太織」「鬼秩父」として普及し、次第に頑丈な造りが評判を呼び武家の人も重宝するようになりました。さらに「太織」は「秩父銘仙」と呼ばれるようになり、明治中期から昭和初期にかけておしゃれ着として普及し、最盛期を迎えます。1908年(明治41)には坂本宗太郎氏が「解し捺染(ほぐしなつせん)」の技術で特許を取得し、大胆なデザインが全国的な人気となりました。

秩父銘仙を作る際は、初めに仮織りを行い、その後「捺染」という型染を施します。そして染料を糸に定着させるために一度蒸し、蒸し上がったものを乾燥させたら本織りの準備。経糸の状態を確認・調整したら、本織りの工程に入ります。どんどん織り進めて、予定していた大きさになったら織り機から布を取り外して完成です。