アンティミスム

アンティミスムとは、室内の様子や家庭での生活をはじめとした、親しみやすい物事を題材にした絵画の傾向のことです。フランス語で「親密な」「内的な」を意味する「intime(アンティーム)」から派生して生まれた言葉で、日本語では「親密派」と呼ばれることもあります。

美術批評における用語としては19世紀末から20世紀初頭にかけて使われるようになりましたが、アンティミスムの傾向が伺える作品は17世紀ごろから確認できるとされています。古い作品だとフランドル地方(現在のベルギー、オランダの一部、フランス北部)で活動していた、フランドル派の作品にも見られます。

日常的な物事のなかでも、特に室内の風景を描き、画家や対象物の内面を感じ取れるような作風なのがアンティミスムの作品の特徴です。また、母親と子どもを描いた「母子像」も、アンティミスムでよく見られる題材のひとつです。アンティミスムをひとつの絵画傾向として取り上げたのは、フランスの批評家であるC.モークレールであると考えられています。

アンティミスムは、19世紀末のパリで活動していた前衛芸術家集団「ナビ派」が取り組んだ絵画傾向との関連性も伺えます。特にエドゥアール・ヴュイヤールとピエール・ボナールが制作した絵画は、アンティミスムの作品に該当するものが多いとされています。

アンティミスムの作品の代表例は、エドゥアール・ヴュイヤールが1894年に制作した『朝食』や1902年の『室内』など。エドゥアール・ヴュイヤールは特に身近な題材を好み、自らを「アンティミスト」と称しました。