アークアンドクラフツ

アークアンドクラフツとは、19世紀末にイギリスとアメリカで興った芸術運動です。産業革命による粗悪品の大量生産を批判し、中世の職人の技術を復興させようと、作家のジョン・ラスキン(英)と、デザイナーのウィリアム・モリス(英)が中心となってイギリスで活動を開始しました。製作した主なジャンルは、壁紙・家具・ステンドグラスなどのインテリア製品と、装飾を施した書籍です。

アークアンドクラフツのインテリア製品の特長は、中世をイメージした古びたデザイン。家具の接続部をあえてむき出しにする、オーク材をいぶす・着色するなどし、使い込んだ年代物のような雰囲気を演出しています。絵柄は様式化した動植物の連続模様やハート形を用いており、当時の「中世風」のイメージを色濃く反映しているのも特色です。

代表的な作家・組織は、イングランドのモリスやグルービー・ハンス会社、アメリカのロイクロフターズなどが挙げられます。モリスは家具をオークの無垢材で製作。切り出した木材に手作業で加工を施した素朴なデザインが魅力です。グルービー・ハンス会社は陶製の容器、ロイクロフターズは銅製品を手作業で作りました。

組織的に活動を行ったのも、アークアンドクラフツの特徴の1つです。賛同した人々は、中世の職人の共同体である「ギルド」をモデルにした組合や、手工業ギルド学校を設立。1880年代後半以降は、独自に展覧会を開催します。彼らの活動は各国に伝播し、アールヌーヴォーやウィーン分離派、さらには柳宗悦をはじめとした日本の芸術家にも影響を与えました。