シバクローム

シバクロームとは、スイスのシバガイギー社が開発した、カラープリントの技術です。別名「チバクローム」「イルフォクローム」とも呼ばれています。一般的な版画と異なる点は、紙やキャンバス布ではなく、フィルムに図柄を印刷するところです。絵画よりも、写真寄りの技術と言えるでしょう。

写真は普通、「発色現像法」を使って現像します。化学変化を起こして色が付いていない媒体に必要な分だけ発色させる技術なのですが、時間の経過とともに色あせていくのが難点でした。一方シバクロームでは、写真を現像するときに「銀染料漂白法」を使用します。図柄をプリントする過程で使わない色を漂白することで抜き取り、現像に必要な色だけを残すのです。

不要な色彩を除去して現像するぶん耐久性が向上し、時間が経っても透明感や色が失われにくくなります。また、全工程を通して中性の状態で作業するため、酸化しにくいのも特徴です。現在は作品の制作だけでなく、博物館や美術館での保存資料としても活用されています。シバクロームが持つ強度の秘密は、現像の際に使用する染料「アゾ染料」です。衣服の染付に使われることもあり、強度の確保とクリアで鮮やかな発色を兼ね備えています。

シバクロームでプリントすることで、手彩が可能になるのも特色の一つです。手彩とは、刷り上がった版画の上にアクリル絵の具などで点や線を加える技法。光の反射や波しぶきをリアルに描くことができ、原画のような作品になります。