パリアン磁器

パリアン磁器とは、磁器の一種のことです。美しい白大理石が採れることで知られるエーゲ海の島、パロス島に由来しています。由来の通り、大理石のような白くてつるりとした質感が特徴です。イギリスをはじめとしたヨーロッパを中心に白大理石のような磁器の研究開発が行われたことで誕生しました。

パリアン磁器が開発された背景には、当時のイギリス貴族の間で大理石の像が流行していたことがあります。しかし大理石の像は希少性が高く、貴族のなかでも上流階級の人しか手にできませんでした。そこで「大理石風のもので良いから手に入れたい」という需要が生まれ、各地の磁器工房でパリアン磁器の研究開発が始まったとされています。

パリアン磁器を始めて開発した工房は諸説ありますが、なかでもコープランド(現スポード)が有力視されています。長石を主成分とし、釉薬を使用しないことで大理石のような質感を再現できました。工房により配合には違いがありますが、一般的な陶土と比べると粘り気が強い傾向にあり、複雑な表現にも適しているのがパリアン磁器の陶土の特徴です。

パリアン磁器の生産は19世紀後半に最盛期を迎え、80以上のメーカーがパリアン磁器の像を制作していたと考えられています。メーカーによってはパリアン磁器の呼び方を独自のものにするところもあり、例えばウェッジウッドの場合は採石場にちなんで「カッラーラ」という呼称を使いました。正装した男性の胸像や、獅子に腰掛けている女性の像など、パリアン磁器では芸術的な作品が多数制作されました。