フランケンタール窯

フランケンタール窯とは、ドイツにあった陶磁器の生産地のことです。開窯したのは、フランスのストラスブールという場所で陶磁家として活動していたポウル・アノン。フランスで磁器の製造に成功していましたが、王令によりフランス国内で磁器の制作ができなくなったため、拠点をフランケンタールに移して開窯しました。

フランケンタール窯が開窯した時期は、1755年です。ポウル・アノンは低温で絵付けをする「プティ・フュ」という技法を発明し、陶磁器に明るい絵付けができるようにしました。また、ステンシルを使って絵を陶磁器に転写する「ポンシフ」という技法を取り入れ、華やかな作品を数多く生み出しました。ほかにも輪郭線を黒線で描く「カリテ・コントルニー」やグラデーションを付ける「カリテ・フェヌ」など、さまざまな技法を用いて繊細で美しい作品を生産しています。

フランケンタール窯の勢いが特に盛んだったのは開窯してからの約20年間で、少しクリーム色が混ざった陶磁器に、マイセンを思わせる可憐な絵付けを施した製品が作られました。磁器製の小さな彫像が印象的で、精巧な彩色と躍動感のある表現を用いてぱっと目を引く作品が生み出されました。テーブルウェアには花を多く用い、かわいらしさを表現したものが多いのが特徴です。

1780年代以降はフランスの王立製陶所であるセーブルの影響を受け、フランケンタール窯は独自性を失っていきます。さらに1803年に勃発したナポレオン戦争にも巻き込まれ、フランケンタール窯は開窯から50年も経たないうちに閉窯を余儀なくされました。