マニエリスムとは、16世紀の中ごろから末期のヨーロッパの芸術様式を指す美術用語です。ルネサンスの最盛期とバロック初期の合間に当たる期間に数多くの作品が制作され、遠近法の使い方や空間の表現の仕方に特徴があります。遠近法の消失点を極端な高さに設置したり、奥行きをなくして平面的な空間構成にしたりしているのです。
有名な作品として、ブロンズィーノの『愛のアレゴリー』や、パルミジャニーノの『長い首の聖母』が挙げられます。宗教改革やスペインによるローマ略奪などを背景とした、当時の人々の不安感が反映されているのが特色です。また、ルネサンス期の作品の古典的調和をわざと破壊し、新しい芸術動向の模索を試みていることもうかがえます。
イタリア語で「手法」「様式」という意味を持つ「マニエラ(maniera)」が語源となっています。もともとはミケランジェロやラファエロ、レオナルド・ダ・ヴィンチなどルネサンスの最盛期を創り出した芸術家を評価するために用いられていました。16世紀になるとルネサンス美術の手法を真似することを「マニエリスム」と呼ぶようになります。
しかし17世紀になると、ミケランジェロ達の様式を模倣することを非難する声が上がりました。次第にマニエリスムは、創造性のない廃退した美術の代名詞になっていったのです。マニエリスムが再度評価されたのは20世紀に入ってから。ルネサンス最盛期以降の美術様式を表す言葉として定着していきました。